「決定的証拠」にあらわれた「決定的」疑問

       

 

 

 

 

5月20日付 民衆の声より

「決定的証拠」にあらわれた「決定的」疑問   [天安艦、残る疑問①] 「1番」「北の魚雷」推進体、軍の説明を聞いてみる

チョ・テグン記者taegun@vop.co.kr

 

国防部、民軍合同調査団(以下、合調団)が20日、天安艦は「北朝鮮製の魚雷による外部水中爆発の結果として沈没した」と公式発表した。 しかし合調団が提出した根拠を見れば、まだこのかん提起された多くの疑惑のうち相当数が解けておらず今後論議になるものと見られる。

特に合調団が「決定的証拠」と主張した魚雷のプロペラ推進モーターと操縦装置、スクリューからして明確な説明が不足している状況だ。

◇「北字体」という肉筆で書いた「1番」、インクは? =合調団はスクリュー推進部の後部分の内側にある「1番」というハングル表記が、軍が確保した北朝鮮魚雷の表記方法と一致すると発表したが、当初機械で彫られていると予想されたのと異なり、「1番」という表記は青色インクで書かれた肉筆だった。

合調団はこの表記に対して、7年前回収した北朝鮮の訓練用魚雷に肉筆で表記された「4号」という字体と「表記方法」が一致すると主張したが、明確に根拠付けることができなかった。

はっきりさせるためには「1番」の筆跡のインクを採取して分析してみれば簡単だが合調団はこれをしなかった。 これに対する記者の質問にユン・ジョンソン合調団科学捜査分科長(陸軍准将)は「インクを採取しようとすれば損傷させるから今後にすることにした」と話した。

合調団ユン・トギョン団長も『「1番」がマジックのようなもので書かれているのは変だ』という質問に、『インクを分析してそれがどうなるのか調べてみなければならないが、その程度なら他の可能性はない』と言い切った。

「1番」の字体が7年前の「4号」の字体とどんな違いがあるのか筆跡鑑定をしたかという質問にもユン准将は『(対照しようとするなら二つの字体の)初声、中声、終声(訳注:ハングルを構成する3つの部分)が全部そろっていなければならない』として二つの字体を分析しなかったと話した。 当初、政府消息筋らは『「番」というハングルの形が北朝鮮の宣伝用文句によく登場する活字体』と主張したがこの日公開された「番」の字体に対して合調団は特別な説明をしなかった。

「1番」という表記が何を意味するのかに対してもユン・ジョンソン准将は『通し番号を付けるときに偶然に書いたのではないか』と曖昧な解釈を提起した。 7年前の北朝鮮の訓練用魚雷に肉筆で書かれた「4号」と、今回発見された「1番」の違いに対してもユン中将は『慣習によって違いが生じたようだ』と話した。

また、海底から去る15日に引き揚げた魚雷推進部に表記された「1番」の表記のインクは約1月のあいだ、塩度の高い西海(ソヘ)海中にあったが、薄くなった様子もなく比較的はっきりしていた。

◇北魚雷輸出用紹介パンフレット? =魚雷推進部が北朝鮮の魚雷輸出用パンフレットから出てきた設計図面と正確に一致するという点も疑問点が残っている。 合調団は『北朝鮮が海外で武器を輸出するために作った北朝鮮製の武器紹介パンフレットに提示されているCHT-02D魚雷の設計図面と正確に一致』すると発表した。

ユン・トギョン合調団団長は前もって、「1番」の表記よりも北朝鮮の「武器紹介パンフレット」から見つけたという設計図面と魚雷推進部の諸元(訳注:兵器の大きさや重量など)が同じ点が、より強力な「決定的証拠」だと強調した。 ユン団長は「北朝鮮の魚雷輸出用パンフレットを直接見たか」という質問に『見た。 設計図には英語で書かれていた。 直接見た』として『それが一番確実な証拠』と語った。

北朝鮮の魚雷輸出用「武器紹介パンフレット」に魚雷の設計図まで記載されているということに対して記者たちは疑問を示したが、合調団は「保安問題」でこのパンフレットをマスコミに公開しなかった。 合調団連合情報TF団長のファン・ウォンドン空軍中将は「提示された設計図がパンフレットと一致するか」という質問に『パンフレットをそのまま拡大してそのまま描いたもの』と説明した。

「15日に魚雷推進部を引き揚げしたが、時間的にすでにその前に北朝鮮魚雷輸出用パンフレットなどを収集しておいて引き揚げした後に対照したということなのか」という質問に合調団科学捜査分科長のユン・ジョンソン准将は『そうだ』と答えた。

しかしユン准将は、パンフレットにどんな火薬を使っているかが載っているかとの質問には『表記されていない』として『パンフレットの年度は80年代であるようだ。 80年代中盤、でなければ後半であるようだ』と話した。 「魚雷製作年度がパンフレットに記されているか」という質問には、「80年代くらいだったようだ」と話した。

◇あまりにも無傷な魚雷推進部 =回収された魚雷推進部の状態がとても良好な点もまた他の疑問点だ。

合調団は国防部の大会議室の記者会見場に魚雷モーターと操縦装置、プロペラを原形に近く復元して公開した。 ところが推進軸やスクリュー、モーターは曲がったり損傷した部位が全くなかった。

ユン・トギョン団長は「天安艦を破壊するほどの爆発力なのに魚雷推進部がそのまま出てきたということがちょっと不思議だ」という記者の質問に『魚雷の前にバッテリー部分があって(後方が)残っていた』と話した。

合調団が発表した'CHT-02D'魚雷の図面を見れば「音響誘導部-追跡整備部-爆薬部-バッテリー部-推進モーター部-操縦部」で構成されているのだが、まん中の「爆薬部」がさく烈したので「バッテリー部」の後方の「推進モーター部-操縦部」がそのまま出てきたという説明だが、天安艦を真っ二つに切断するほどの衝撃波とバブル効果に合っても魚雷本体を構成する部品に全く反りや破損跡がなかったという点は疑問として残る。

ユン・トギョン団長は「米国やオーストラリア関係者たちは、このように完全な形で発見したことに対してどのような反応であったか」という質問に『彼らも驚くべきことだという反応』だったとし、『オーストラリアや米国では船体を沈めるのが目的なので(魚雷を探すために)海底を調査したことがなかったそうだ』と話した。

◇スクリューの吸着物が、天安艦の艦体の吸着物と同じ? =天安艦の艦体から発見された吸着物質と魚雷のプロペラとモーターから発見された吸着物質が同じアルミニウム酸化物という「決定的証拠」も疑問だらけだ。

合調団はこの物質が魚雷のバブル効果を高めるために火薬に20~30%混ぜられていたアルミニウムパウダーが酸化するときに生成されたものと説明した。 吸着物質の分析を引き受けた合調団イ・クンドク博士は水中爆発実験とシミュレーション結果を示して『決定的証拠物の成分分析結果と艦首・.艦尾・煙突の成分分析結果がほとんど一致する。 天安艦が爆発する時プロペラがそばにあったということだ』と語った。

しかし合調団は天安艦の砲射撃訓練の時に出た火薬成分が煙突などに吸着していてそれが発見された可能性に対しては最初から排除してしまった。 当初、軍の実務ラインでは韓国海軍の艦砲火薬とも比較.分析をしなければならないという意見を出したとされていたがこの日のシミュレーションではこういう分析はおこなわれなかった。

◇魚雷の腐食程度、切断面の腐食程度とはどんな違いが? =また、合調団は『海底に1ヶ月ほど沈んでいた艦首の鉄製の部分の腐食の程度が今回発見されたモーターの部分の鉄製の腐食程度と似ている』と話したが、艦体は約一ヶ月間海底にあり、魚雷推進部は一ヵ月半ほど海底にあったが具体的に副食程度がどうなのかに対して説明が不足した点も疑問の余地を残している。

合わせて前日、政府消息筋は『プロペラの金属成分の材質が7年前に回収された北朝鮮の訓練用魚雷と同じだと分析されて北朝鮮魚雷という結論を下した』と語ったが、ユン・トギョン団長は『(二つの魚雷の金属材質を)比較しなかった』と話した。

一方、この日記者会見場には去る(5月)15日に魚雷推進部を引き揚げた、はえ縄漁船の船長も参加して当時の情況を説明した。

はえ縄漁船の船長は、合調団の説明資料に魚雷推進部の回収当時の写真が提示されていることに対して、ある記者が「写真撮影要員があらかじめ乗っていて撮影したのかどうか説明してくれ」という質問をすると、『引き揚げの少し後に撮影官と司令官が来て撮影した』と言い、『そのあとに私たちが毛布で損傷しないように包んでもってきた』と話した。

しかし彼は、詳しい説明を要求されるや、『詳しい事はチェ大佐が話してくださったらと思う』といって合調団の採証団長であるチェ・ドファン大佐にマイクを渡した。

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